ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 その日の午後。

パソコンを扱っていた広海君が突然声を上げた。

「先生っ、またデータが取り込めなくなっちゃった!」

こんな時だけカワイイ声を上げるんだよな。

「またか」

「隣から平山さん、呼んで来ま~す」

パソコンで何か起こった時は、廊下を挟んだ向かいの実験室の平山さんにいつもお世話になっている。

彼女は理工学部の助手で、合気道部の部長も務めるっていう才女だ。

「いいよ。僕が呼んで来るから」

立ち上がって廊下へ出る。

と後からミライもついて来て、廊下を横切って扉の前に二人揃って並んだ。

「すいませーん、失礼しまーす」

ノックをして扉を開けて、窺うように中を見回してみた。

「はーい、なあにー」

奥の方から返ってくる声。

よく見ると、円筒形のドーナッツ型の装置の向こう側に、潜り込んでいる平山さんの足が見えた。

「すいませーん、またうちのパソコンがおかしくなっちゃって」

呼び掛けながら平山さんの方へ歩み寄った。

「ちょっと待ってー、今いいとこだからぁ」

と声が返って来た後、部屋の中央の装置がブーンと唸りをあげた。

〝バタンッ〟

と、後ろで何かが倒れる音がした。

(ん?)

振り向くと、倒れていたのはミライ!

「ミ、ミライッ!」

な、何だ!何がどうなったんだっ?!
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