ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 その後、データが全て無事に残っている事がわかって、ホッと一息。

「電波干渉を防御するシステムが暴走ぎみに働いて再起動したんだろうね。強電磁場までは想定してなかったからさ」

控え室で、椅子に腰掛けながら声を上げる所長。

「そんな環境に行くとは思ってませんでしたし。この際、シールドを強化して装着し直した方がいいかもしれませんよ」

「でも局長が許してくれるかしら。皮膚を剥がしてとなると、またかなりお金を使うことになるけど」

腕を組んで立っていたクワンが呟く。

(お金が掛かるのか…)

そりゃそうだろうね、あれだけの出来栄えなんだから。

「素直にウンって言わないだろうなあ、局長は…」

パッとふてぶてしい局長の顔が思い浮かんできた。

なにしろ所長に、予算が無い事にはボクらはなんにも出来ない、そう言わせた局長なんだ。

ちょっとやそっとお願いしたぐらいじゃ、聞いてくれなそうだよ。

「ただでさえ予算が厳しいんだからさ、きっとムリだろうね」

眉をひそめる所長。

でもそうなると心配だなあ。

(またこんな事になったら…)

と、本田君がスッと前に出てきた。
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