ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ご飯にしますよー」

奥さんの掛け声でみんながダイニングテーブルに集まった。

「ねえママー、イスが足りないよー」

大きい方の愛ちゃんの声。

確かに四人がけのテーブルにはみんな座れない。

どうするんだろ。

「そうねー、みんなで一緒にはムリねー」

と奥さんが所長に目配せしてお互い黙って頷き合った。

「さぁ、愛、舞、ママと一緒に向こうで三人で食べましょうねー。自分のお箸とコップ持って行くのよー」

「はあーい」

声を揃えた女の子ふたりがバタバタと隣の和室へ入って行って、座卓の前にぺたんと座った。

「…子供たちには、ミライの事は話してないんだ」

そっと囁いてくる所長。

なるほどね。

と奥さんが僕と所長の前だけに料理を並べて、残りをお盆に載せて隣の部屋へ入って行った。

「それじゃ、いただきまーす」

「いっただっきまーす」

子供たちの元気な声と共に、にぎやかな夕食が始まった。
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