ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「もちろん、ずいぶん可愛らしくなったなってコトが一番うれしいんだけどね」

ニヤけた笑みを見せる所長。

(ハハハ、そうですね)

つられて微笑んで返す。

と、所長がタバコをフーッとふかしてきた。

「どうだい、今までミライと暮らしてみて。何か違和感を感じる事はあったかい?」

所長の質問に、今日のオープンカフェでの出来事が思い浮かんできた。

「暑かったら服を脱ぐって判断は、自分では出来ないんですか?」

「いやいや、そんな訳ないよ。暑さ寒さに対処する行動パターンは基本だからね。ホントに出来なかったのかい?」

まじまじと見つめ返してくる所長。

「ええ、今日オープンカフェに座った時に。暑かったら上を脱ぎなよって僕が言うまでジャケットを脱がなかったんですけど」

「ウ~ン。脱ぎたくないって判断する要素が何かあったのかなぁ…」

顎に手を当てる所長。

脱ぎたくない要素と言えば…。

「ミライって、胸元を見られたくないって思ったりするんですか?」

聞くと、所長が大きく頷いて返してきた。

「ああ、それは思うよ。そうプログラムしたから。恥らう乙女は憧れだからね!」

何ですかそれ…。

「とは言っても、暑いって判断が優先するようにしないとオーバーヒートを起すなぁ。体を壊しては恥らう乙女も台無しだゾ」

まじめ顔で呟く所長。

暑いって判断より、恥ずかしいってプログラムが優先したワケですか。

(らしいなあ…)

と、ふと疑問が湧いてきた。
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