ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「そうだよ…」

所長が呟くと同時にタバコの灰がポロリと落ちた。

それでも、所長はじっと動かない。

「どうしたんですか?」

問い掛けて、しばらく動かない間が出来た後、

所長がパッとニヤけた笑顔で振り向いてきた。

「見つけたかもしれないよ」

「え?」

「感じるココロを生み出すヒントを!」

所長が肩をバンッと叩いてきた!

「ホントですか?!」

「ウン!感じるココロを実現する、大事なヒントになるよ!」

まさか!ホントにそんなのが見つかるなんて!

「で、一体何なんですかそれは?!」

詰め寄ると、所長がニヤーッと笑顔で返してきた。

「それはまだ話せないな~♪」

「えーっ!そんな、どうしてですか!」

ここまで盛り上げといて話さないなんて、人が悪いですよ所長ぉ~。

「ちゃんと形になってから話したいんだ。明日から研究所に泊まり込みで煮詰めるからさ!」

と言うが早いか、慌ただしくベランダから部屋の中へと入っていく所長。

「おーい、旅行カバンって何処だったっけ?」

頭を掻きながら声を上げてるし。

「寝室のダンボールのどれかよ。後で片付ける時に出しておくわ」

キッチンから振り返ってくる奥さん。

「パパー、お出かけ?」

と、ぬいぐるみ片手に愛ちゃんが和室から出てきた。

「明日からね。しばらく帰って来れなくなっちゃうんだ。寂しくなるけど、ゴメンね」

優しく頭を撫でる所長。

とガッカリするかと思いきや、愛ちゃんが意外にもニッコリと笑みを返した。
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