ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 タクシーを飛ばして研究所に駆けつけ、ミライを連れて研究室へと駆け込む。

「おっ」

扉を開けたすぐ目の前に、所長と本田君とクワンが並んで待ち構えてるじゃないか。

「待ってたよ。さあ、みんな始めよう!」

所長の声に研究員たちがバッと動き始め、研究室にパンッと活気が満ちた。

「な、何を始めるんですか?」

雰囲気に圧倒されそう。

「感じるココロのプログラムを組むのに、ミライの今のデータ状況がどうしても必要になってね」

と奥に向かって歩き出す所長。

「じゃあもう、そんなところまで出来上がってるんですか?!」

「ボクの頭の中ではね。これから一気に形にしてみせるよ」

歩きながら瞳をキラめかせてる。

「形っていうのは?」

一体どんな形ですか?

「詳しくは後で話すよ」

って所長、またスカす~。

「さあ、まずはミライ、セーフモードで再起動だ」

研究室の隅のスタンドの前で振り返る所長。

「はい」

ミライが頷いて、スタンドにこちら向きに立って、所長が真正面から向き合って目線を合わせた。

「ミライ、セーフモードで再起動」

所長の声に一瞬ピクンと動いた後、ミライが微笑みを浮かべた表情のままピタッと動かなくなった。

と、横からサッとミライの耳にケーブルを繋ぐ所長。
< 125 / 321 >

この作品をシェア

pagetop