ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「よぉーし、まずはデータの抽出とコピーから始めよう。コピーしたデータの分析はクワン、君が指揮を取って取り掛かってくれるね。プログラムとの整合性は念入りにチェックをね。ブローカ領域はもちろん、使えるところは全部使うんだよ」

矢継ぎ早に指示を出す所長。

よくわからないけど、

「ミライのデータを何かに使うんですか?」

「ウン。あの二号機にね」

と所長が指差した先、腰の高さの棚の向こうにある円柱状の背の高い骨組みの中に、最初に見事な動きのパフォーマンスを見せてくれた骨格のロボットが、部品に囲まれて静かに立っていた。

あれが二号機だったのか。

「ようやく待ちに待ったこの時が来たよ。修正プログラムと新部品を組み込んで皮膚を被せて完成させる。ヒューマノイドの、より進化した完成形の誕生。これでスムーズに次のステップへ繋げられる。それもこれもみーんな君のヒントのおかげなんだ。君を選んで大正解だったよ!」

所長がニコニコと二号機を見つめてる。

周りでは研究員たちが活気に満ちた動きを見せてる。

実験が新段階に入ったんだな。

(僕のおかげ、って言われると嬉しいな)

目の前のにぎわいは、僕のヒントから動き出してるんだな。

何だか喜びがフツフツと込み上げてくるよ。

「さ、あとは任せて控え室に行こうか。コーヒーでも飲もう。インスタントだけどね」

ハハハ。

お決まりのセリフですね所長。

でも今日はいつになく、ワクワクと聞こえてきますよ。
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