ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 翌朝。

遠くで鳴るアラームに目を覚ます。

(…そうか)

立ち上がって引き戸を開けて、鳴り響くアラームを止める。

ベッドの上は空っぽ。

(こういう時に恋人がいればな…)

久しぶりに感じる心のざわめき。

フゥ。

扉を閉めて、誰もいないリビングを、なぜかじっと眺めてしまってた。





 少し遅れて、実験室の扉を開けた。

「…どうしたのよ先生。何かあったの?」

『おはようございます』の声もなく、落ち着いた声で広海君が聞いてきた。

「済まない。ちょっと遅くなった」

頭を下げて返す。

「ミライさんは?」

いるべきミライの姿を探す広海君。

「…ああ、それが早めに夏休みを取って実家に帰らないといけなくなってさ。戻って来るのはお盆頃になるらしいんだ」

所長が言った通りの言い訳。

「へぇ、そう」

と低い声のトーンで答えて、机に向き直る広海君。
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