ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「…カワイイわよミライ。春のお出掛けにピッタリね」

と、奥に並んだロッカーの向こうから、女性の研究員と並んで服を着替えたミライが出て来た。

フリルのブラウスにカーディガンを羽織ってパンツを合わせたスタイル。

ミライのプロポーションの良さがよくわかる。

ホ~ント、ダイナマイッ☆

「おぉ~着替え終わったようだね、クワン」

と所長がミライの横にいる女性に声を掛けた。

(ん、クワン?)

という事は、顔じゃ判らないけど、

「彼女、日本人じゃないんですか? 」

アジアの人?

「確かクワンは、西海岸のチャイナタウン出身だったかな。留学生で日本に来て、そのままここの研究員になったんだよ」

なるほど、こういう研究所ではそれも珍しくはないのかも。

「所長どうですミライの服。私がコーディネートしたんですよ。中のブラウスのフリフリが可愛らしいでしょ」

クワンがミライのカーディガンの前を大きく開けて見せる。

前身の裾から襟まで繋がる波打つフリフリが可愛らしく飾り立て、首元ではシルバーのジュエリーが輝いてる。

(イイじゃん♪)

似合ってるよ。

「可愛さ倍増だね。それクワンの服、じゃなさそうだね」

「ええ。サイズを合わせて買って来たんですよー。私こーんなにスタイルよくないですから」

照れるように手を振る彼女。

細身だけど、プロポーションではミライには負けてるかな。

「ミライと比べたら誰もかなわないですよ、」

と、いつの間にか所長の隣の机に腰掛けていたメガネの研究員が、一言続けた。

「この研究所の中でならね」

言うね君も。

「ひどぉい、本田君まで」

言い返すクワン。

所長たち三人が楽しそうに笑い出す。

(いいなぁ、楽しそうな研究室で)

こっちはずっとアイツとニラめっこだったもんナ…。

(ミライが来てくれれば変わるかな?)

うん、ちょっと希望が見えてきたゾ。
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