ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「よかった先生が来てくれて。ルミちゃんもヨッシーもみんな実家に帰っちゃったでしょ、一人で晩ご飯食べるの寂しくって」

ってオイオイ、誰でも良かったって事か?

「でもちがうのよ、誰でも良かったって訳じゃないからね、先生」

おっと、気持ちを見抜かれたかな?

と、急に真面目に見つめてくる広海君。

「ねぇ、いつか教授が言ったこと覚えてる?二人はお似合いだと思うって」

あー、うんうん。

控え室で、教授が院生たちと一緒になってけしかけて来たんだよな。

「私もね、先生といると居心地がいいって感じるの、ホント」

照れたように微笑む広海君。

「ん、ああ、ありがとう」

なんか調子狂うな。

ま、微笑んでくれると嬉しい限りだよ。

僕がどれだけ気をつかって君に合わせてきたかを思えばね。

「わかってる。先生にとっては私なんか、手の掛かるワガママな女だって」

うわっと。

心を見透かされてる?

「でもこんなに長く一緒にいて、居心地の良かった人って先生が初めてなの。ねぇ、これって先生と学生って関係だからだけ?ただそれだけ?ねぇどう思う?」

え、いや、どうなんだろう。

君にとっては相性がいいんだろうけど。

と、広海君がテーブルに手をついてグイッと身を乗り出してきた。
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