ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ホントに私たちお似合いなのかもって、最近思うのよね。だってこんなに居心地いいんだし」

それは、君だけじゃないか?

「私だけじゃない。先生だって。もっと、ずっと一緒に居てくれたらわかる。一日中ずっと、ね…」

体を寄せて上目遣いで見つめてくる。

ワッ!

誘って来てる誘って来てるよ!

(こ、ここは断るべきか?!)

待て待て、よく考えろ。

彼女は確かに男を振り回すけど、誰彼構わずってタイプじゃない。

僕への感謝は感じてるって言ってるんだし。

彼女が、本当に考えて僕を選んでるとしたら、

ここは応えてあげるべきじゃないのか?

(じゃないと、言い寄って来た彼女に恥をかかせてしまうんじゃないのか?)

彼女の瞳を見つめ返す。

ほんの僅かな、凄く深く長く感じる時間。

どうするっ!

「…いいの。私焦るつもりないから」

と、パッと身をかわされた。

あ、あれっ?

(そ、そうくるのか)

ホッとした以上に、シマッタ感じが。

「先生がそんな軽い人なら、もうとっくにミライさんとイイ仲になってるハズだもんね」

ニッコリ笑って、ビールを口に運ぶ広海君。

「そうだね」

即答して返す。

動揺を悟られないように。

「さ、センセーも飲みましょ。まだあと2パックあるから」

僕のビール缶に乾杯をして澄ましてビールを口にする広海君。

(度胸がない男だって、思われたかな?)

ん~、考えても仕方ない。

こんな時は、とにかく飲もう!
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