ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「待ち望んでいたこの日がようやく来たよ。ヒューマノイドの、真の意味での完成形の誕生と言ってもいい」

振り向いてポンと肩を叩いてくる所長。

「新しいミライを君に託す時が来たよ」

所長に導かれて、スタンドに立つミライの正面に並んで立った。

「今日からは、君をミライの管理者にしようと思うんだ」

え?

「管理者?」

「そう。ミライにアクセス出来る管理者」

と所長がミライの肩をポンポンと叩いた。

パッと瞼を開けるミライ。

所長がその目を覗き込むように顔を近づけてる。

「虹彩照合。確認しました。指示をどうぞ」

「管理者変更」

「はい、管理者変更ですね」

「YES」

「新しい管理者の虹彩登録に入ります。どうぞ」

と、所長がスッと脇へ避けてこっちを向いて促してくるじゃないか。

(僕が新しい管理者になるって事、か)

何だかご主人様とメイドって関係みたいだぞ。

(照れくさいなぁ…)

ま、仕方ないか。

所長がしたように、顔を近づけて彼女の目を覗き込む。

「…虹彩登録。確認しました。続いて名称設定に入ります。管理者の名前をどうぞ」

ミライの声に、自分の名を呼びかけた。

「名称設定。確認しました。続いて、私の名前をどうぞ」

えっ、ミライの名前?

慌てて所長を振り返った。

「僕が名前を付けるんですか?」

そんな仕掛けなんですか?
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