ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「じゃあ君の部屋まで送るよ。ボクも久しぶりにマンションに帰るからさ」

意気揚々と歩いていく所長。

(僕の部屋にか…)

確か広海君、帰って待ってるから来てって言ってたよな。

う~ん。

(もうとっくに日付が変わっちゃってるし、明日もあるしなあ)

もう寝てるだろうから、行けなかったゴメン、とメールを送っとこう。

携帯をイジリながら所長の後について歩いて、ミライと一緒に車の後ろに乗り込む。

と、所長が手慣れた仕草で車を発進させた。

「…どうだいミライ、何か変わったトコロを感じるかい?」

動き出した車の中で、チラッとミライを振り返って声を掛ける所長。

「んー、別に…」

小首を傾げて答えるミライ。

「ちょっとこっちへ手を伸ばしてくれるかい」

所長の声に、ミライが運転席と助手席の間から前へ手を伸ばす。

その手を所長が片手をハンドルから離して掴んだ。

「何か感じるかい?」

「…」

手を掴まれても反応を見せないミライ。

と所長が、バックミラー越しにチラリと僕に目を合わせてきた。
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