ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ボクに代わって握ってみてよ」

「え、ええ」

言われるままに、ミライの手を取って握り締めてみる。

と、ミライの表情がハッと変わった。

「なんだか、ドキドキしてきた」

ミライが驚いた顔で見つめてくる。

「ホントに?」

「うん。…ほら、トクトクトクって勝手に速くなってる」

ミライが僕の手を手首に宛がってきた。

「ホントだ、脈が速くなってる」

手首からトクトクと速いリズムが伝わってくる。

「ウンウン、よかった。想定通りだよ」

ミラー越しに笑みを見せる所長。

(そうか)

これが、ミライの身体に変化が起こったって事なんだな。

「不思議な感じ…」

ミライがキュッと身体をくねらせる。

「でも、なんだかうれしい、この感じ…」

スッと指を絡めるように僕の手を握り返してくる。

柔らかな手から、ミライの温もりがジンジンと伝わってくる。

「ミライ…」

グッと魅力を増した微笑む横顔を見つめながら、車に揺られた。

今、ミライのココロが感じてるんだ。
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