ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「広海君も先に帰ったし、今日は早めに帰ろうか」

ミライに声を掛けて立ち上がる。

昨日はデータ整理にミライの迎えにと、かなり遅くまで頑張ったからさすがにキツイよ。

「うん」

可愛い笑顔で返してくる。

疲れも吹き飛ぶね。

「じゃ、行こうか」

ミライを連れて校舎を出て、蒸し暑さの残る夕闇迫る学内を裏門へと歩く。

と、後ろから駆け寄ってくる足音が。

「セ~ンセッ!」

ハァ~。

彼女は一時も僕を休ませてはくれないんだナ。

「どうしたんだよ、先に帰ったんじゃなかったのか?」

「取りに帰ってたの」

と、たすきに掛けたバッグをポンポンと叩いてる。

「何を?」

バッグがちょっと膨れて見える。

「実家から送ってきたの、そうめん。ねぇ一緒に食べましょ、先生んちで♪」

えっ!?

「ウチでっ?」

「三人で楽しくいいじゃない、ねっ!」

満面の笑みで僕とミライの腕を取ってる。

「うん!」

ミライが笑顔で頷いて返してる。

「決まりね♪」

って、どうして話を面倒くさくするんだよ~。

と、広海君が僕とミライの間に割って入って来て、両方の腕を組んで先頭を切って歩き出した。

(…僕とミライをくっ付けたくないのか)

ミライがロボットだとは知らないから、僕らの仲が気になるワケだ。

(一緒に住んでるんだしな)

そりゃ二人っきりにしたくないって思って当然か。

「ねえ、お酒は大丈夫なのよね?」

うかがうように尋ねる広海君。

「うん。飲むのは大丈夫」

微笑むミライ。

また飲む気かい広海君。

「よかった。じゃあたくさん買いに行きましょセンセッ!もちろんオゴリで!」

っておい、なんだよ最後の、…

(ま、いいか)

正直、広海君と一緒にいたいって気持ちもあるしな。

(何とかなるだろ)

途中コンビニに立ち寄って、お酒やツマミやつゆや薬味を買い揃えて帰った。
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