ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「先生、ペットロボット持ってるの?」

と、広海君が靴を脱ぎながら聞いてきた。

「え、どうして?」

「これと同じメタノールのタンク、ルミちゃんちにもあったから」

広海君が下駄箱の上のメタノールのタンクを指差してる。

(ゲッ!)

シマッタ出しっ放しだった!

(どうしよう)

所長にだまされたみたいに、ミライの栄養剤だと言った方がいいのか?

でもメタノールと同じタンクに入れるのかってツッ込まれないか?

ここはさらっと流すべきかな…。

「あ、ああ、うん」

「ルミちゃんも、リックって名付けてさ、哺乳瓶でメタノールあげて可愛がってる」

しゃがんで脱いだ靴を揃える広海君。

「へ、へえ、そう」

「先生のは?」

広海君が顔を上げて聞いてくる。

(どうしよう)

今までペットロボットなんて持った事もないよ。

(いまさら栄養剤だって言い直すのも変だし)

そもそもペットロボットなんて、所長のミーちゃんが実物を見た初めてだし…。

(あっ)

そうだ♪

「うん、ミーちゃんって言うんだけどさ、今、所長の所に預けてあるんだ」

とっさにゴマかした。

イザとなったら所長から借りてくればいいや。
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