ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
(お~、ちゃんと出来てる)

リビングテーブルに並べられたそうめんと薬味とツマミ。もちろんビールも揃ってる。

「じゃ、ミライさんには悪いけど先に食べましょ。いただきま~す」

広海君の掛け声で箸を付ける。

氷が浮かんだボウルからそうめんを取って、ねぎとショウガを入れたつゆにくぐらせて口へ流し込む。

麺のツルツルッとした喉ごしが心地イイ。

思いのほか箸が進んで、ボウルの中はあっという間に溶けた氷が浮かぶだけになった。

「…へ~え、いい部屋に住んでるじゃない先生」

広海君がぐるりと部屋を見回してる。

(ん、)

マズイ物は無かったよな大丈夫だよな…。

「ねえ、ミライさんと同じベッドで寝てるの?」

引き戸の奥に目をやって固まる広海君。

「まさか。僕はソファで寝てるよ」

答えてソファをパンパンと叩く。

「ソファに?窮屈じゃない?」

広海君が目をパチクリさせて返してきた。

「ん、まあ多少はね」

もう慣れたけど。

「ねぇ、…」

と、広海君が目線を逸らした。
< 160 / 321 >

この作品をシェア

pagetop