ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「…起きて、起きてよ」

揺さ振られて目覚めると、目の前に眉をしかめた広海君の顔があった。

「どうしたんだよ…」

朝から不機嫌そうじゃないか。

「とにかく起きてよ」

ソファから体を起こす。

そこには広海君一人で、ミライの姿がない。

「ミライは?」

ベッドの上はきれいに整えられて、既に気配はない。

「朝ごはん作るって卵を買いにいったわ。それより先生、」

と、僕の両肩をガッと掴んでくるじゃないか。

「どうして正直に教えてくれなかったのよ」

えっ?

「何の事?」

「んもうっ、ミライさんから聞いたのよっ」

えっ!

ミライから聞いたってまさかっ!?

「バレた?!」

「そう」

大きく頷いてるよ!

なんてこった!

まさか自分から言うなんて!

「どうして嘘ついたの、あのタンクの事」

…え?
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