ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ほーら、愛ちゃん舞ちゃん行くぞー」

二人を呼んで手を取る所長。

「またあそびに来てねー」

「きてねー」

手を振る二人を抱え上げた所長と奥さんがトラックに乗り込む。

やがてエンジンがブルンッと掛かり、女の子二人が窓から身を乗り出して小さな手を振り始めると同時に、トラックがパパァーンとクラクションを鳴らして走り去って行った。

「…行っちゃったか」

二人のあどけなさが心に残るな。

「またいつか遊びに行こう」

「うん」

ちょっと寂しそうにしてる。

「ねえ、」

と、ミライがパッと振り向いて見上げてきた。

「それどんなのが入ってるの?」

ダンボール箱を抱えている僕の手の上から箱に抱き寄ってくるミライ。

「うわぁー、たくさん入ってる」

楽しげに中を覗き込んできてるよ。

目の前すぐでミライの頭がふわふわ揺れて、髪が僕の鼻先をかすめた。

「さっそく作るね、お昼」

顔を上げて微笑んでくる。

「作れるのかい?」

「うん。色々教えてもらったから。期待してて♪」

グッと愛らしい笑顔が目の前に溢れる。

(すっかりその気じゃないか…)

箱をふたりで抱き合って、なんだか雰囲気はイイ感じ。

(ホント、大したロボットを任せてくれたよ)

所長の自慢げな顔が脳裏に浮かんできて、ハッと思い出した。

(そうだよ、これはミライの耐久試験なんだよ)

ミライの事、もっと見てあげないとな。

「ねぇ、お米がないから買いに行きましょう!」

ミライが楽しげに僕の手を取ってきた。

ミライの笑顔と手に感じる温もりは正直、心にグッとくる。

「行こうか」

ダンボール箱を脇に抱えて、僕はミライと歩き始めた。

ミライの手をギュッと握り直しながら。
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