ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ホントいつ来ても嫌ですねぇ事務局って。冷たい感じで」

俯きがちに首を振る本田君。

「しょうがないよ。なにしろ予算がないことにはボクらはなんにも出来ないんだからさ。とにかくこれで正式に共同研究がスタートしたんだ。心置きなくやれるよ」

笑みをこぼす所長。

(予算がないことには、か)

弱いトコロを握られてるのか。

だから頭が上がらない、っと。

辛いね~所長も。

「さぁ~て、」

と、所長が僕にニッと微笑んでみせてから、みんなを振り返った。

「みんなで中華を食べに行こう!」

この人はホント、ヘコまないんだな。

「久しぶりに楽しい食事になりそうですね」

「あとショッピングもね。ミライだってお泊り用の服とか下着とか、化粧品だって欲しいところよね」

「うん」

ミライが微笑んでる。

お泊り用、ね。

言葉の響きはワクワクするね。

「よぉし、じゃあさっそく出掛けようか!」

明るく声を上げる所長。

「しゅっぱ~つ!」

みんなで所長の車にバタバタと乗り込んで、楽しくにぎやかな出発だ。
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