ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 午後。

実験室の扉がガチャッと開いた。

「ただいま~」

現れたのはミライだ。

「あれ、早かったね」

明日までじゃなかったのか。

「うん。早く終わったから帰ってきたの」

と微笑むミライの後ろから、所長が入って来た。

「イイ調子だよ。興味深いデータも取れてるしね。ウンウン」

ニッコリと嬉しそうに微笑んでる。この人は、実験が全てなんだな。

「あらっ、広海さんは?」

と部屋を見渡すミライ。

「うん、風邪引いたって休んでるんだ」

答えると、ミライが心配そうに所長と顔を見合わせた。

「風邪?大丈夫かしら」

ミライが顎に手を当てて考え込んでる。

「朝、電話では大丈夫って言ってたよ」

だからヘタに手は出さない方が。

「でも、いつもあんなに元気そうだから、心配」

「…」

確かに、辛そうに咳はしてたな。

「寝込んでるんだったら、看病しに行った方がいいね。強がって大丈夫って言ってるのかもしれないよ、彼女みたいなタイプはね」

う~ん確かに。

一人で熱にうなされてるのかも。

急に心配になってきた。

「ちょっと、行ってみましょうか」

椅子から立ち上がって、まず教授に事情を電話で告げた。

「ボクの車で行こう。なんだったら病院に連れて行ってもいいよ」

ありがたい言葉ですよ所長。

「じゃ、行きましょう」

ミライと所長を連れて外へ出る。

今行くから、待ってろ広海君。
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