ふたりの彼女と、この出来事。 （新版）

　校舎に駆け込んで、ノックもそこそこに教授室の扉を開ける。

と、真正面に広海君が立っていた。

「あっ、おはよう、さっきは…」

あ、あれっ？

僕の挨拶も聞かずに、広海君がズンズンとミライの前に歩み寄っていくじゃないか。

「フフッ、スゴイわ」

薄ら笑いを浮かべる広海君。

と、人差し指をミライの襟元に突き立ててきた。

「あなた、ロボットよね」

えっ！

ミライの正体もバレたのかっ？！

広海君が眉をしかめてるよ！

「変だって思ってた。食べられないほどの病気の割には全然痩せてないし、肌の色艶もいいし。…全部嘘よね」

見抜かれてるよ。

マズイマズイぞ、どうしよう。

「ねえ先生、薬だって言ったあのタンクはやっぱりメタノールなんでしょ。ロボットだから食べられない、ロボットだから正確にボーリングをマネられる、ロボットだから電磁石に反応して止まって倒れた…。そうでしょ、ねぇ先生」

広海君がギッと僕をにらんでる。

両手を握り締めてワナワナ震わせながら。

「ずっと私を騙してたのよね。私を騙して、私の反応をずっと横で見てた。そうよね先生！」

マイッタ…。

こんな雰囲気じゃゴマかしようがないよ。

「あ、ん、うん」

頷いて返すしかないじゃないか。

と、僕の両手をガッと掴んでくる広海君。

「ねえどうして？隠し事なんかしてないって言ったじゃない！どうしてよ！どうして嘘なんかっ」

広海君が揺さ振ってくる。

アイタタタッ。

ここに来て裏目に出るなんて。

「そ、そういう条件だったんだよ。所長との約束でさ、ミライの正体が外にバレないようにって、そう教授も」

パッと見ると、後ろで教授がブンブンと手と首を振ってる。

（…）

こんな時に自分に振るなって事ですか教授っ！

と広海君が、僕の手をバッと払って目尻を吊り上げてきた。