ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「実験の条件がそれだったんだ。仕方なかったんだ。嘘ついた事は謝るよ、だから、な、この通り」

両手を合わせて頭を下げた。

僕の立場もわかってくれ広海君。

「何よ今さらっ、んもうっ!」

と、手をギュッと握り締めて地団駄を踏んでる広海君。

(マズイな)

かなり気が立ってる…。

「落ち着いてくれ、な、落ち着いて、僕の話を聞いてくれないか」

なだめないとマズイぞ。

「冗談じゃないわよっ」

と、またジッとにらんできた。

「聞きたくない。先生の言う事なんか、もう何も聞きたくないわよっ!」

僕を押しのけて扉に手を掛ける広海君。

「先生なんか大ッ嫌い!」

バタンッと豪快に音を響かせて、廊下へと出て行ってしまった。

「…」

追いかけたところで、何て声を掛ければいいんだろう。

(こんな事になるなんてな…)

あぁ。

せっかく時間を掛けて積み上げた積み木が、一瞬でガラガラと音を立てて崩れ落ちた感じ…。
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