ふたりの彼女と、この出来事。 （新版）

「おはようございま～す」

と、ガチャッと扉が開いて声が聞こえてきた。

振り返ると、ルミちゃんとヨッシーが並んで立っているじゃないか。

「あっ、先生、ああっ、ミライさん！」

二人とも目を輝かせて、明らかにミライに興味津々の様子。

マズイな、ここで騒がれると。

「あ、いや、君たち、…」

う～ん、何て声を掛けたらいいんだ？

「わかってるわよ、先生」

「ミライさんの事は、黙ってればいいんでしょ」

えっ！何でわかったんだ？！

「だって、ここにも居るって知られたら、テレビやヤジ馬が集まって面倒だもん」

「大学がこんな風になったら大変よ」

携帯に映ったテレビのニュース画面を見せてくるルミちゃん。

「そうか、うん、ありがとう」

君たちの物わかりの良さには涙が出そうだよ。

「ね、ミライさん、よく見せて見せて」

ミライの手を引くヨッシー。

と、横からルミちゃんが僕に向かって真っすぐ寄って来た。

「？」

そのまままじまじと僕を見つめてる。

と僕の耳元に顔を寄せて、ささやいてきた。

「先生だけはヒロの事、裏切らないって信じてたのに」

「！！」

ガーン。

なんて心に響くセリフだろう。

（そうだよな…）

僕は嘘をついて、彼女を裏切ってしまったんだ。

「…」

クルッと振り返って、こちらに背を向けたままミライに話しかけるルミちゃん。

背中が無言の怒りをぶつけて来てるようで、心痛いよ。