ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
研究室の中では、所長を始め研究員たちが輪になって、なにやら深刻に考え込んでいた。

「所長、大変な事になってるじゃないですか」

声を掛けながら所長に歩み寄る。

「あ、ウン」

気づいた所長が振り返ってきた。

明らかに意気消沈してる。

「大変だよ…」

そうですよね…。

「よりによって、ロイに運転させて事故っちゃって、クワンが意識不明になるなんて」

きっとクワンが飲んでたからロイに運転を任せたんだろうけど。

いくらなんでも無茶だよ。

「挙句に、マスコミにバレちゃって」

台無しじゃないですか。

「そんな事はどうでもいいんだ!」

「えっ…」

どうしたんですか、そんなに厳しい表情をして!

と、所長がフーッと息を吐いた。

「ロイが動かなくなった方が問題だよ」

見ると、輪になった研究員たちの真ん中で、ロイが静かに寝台の上に横たわっていた。

「壊れたんですか?」

見たところ外傷はなさそうですけど。

「それが、困った事に何が原因なのかサッパリわからないんだよ。事故の後もちゃんと動いて、実際クワンに付いて病院にも行って警察で事情聴取も受けた。それが今朝になって、突然目覚めなくなってたんだ」

今朝になって?

「一晩経ってからって、どうして?」

内部の機器がやられたんですか?

「それが、調べようにもセーフモードで再起動しないと外部からの接触は全く受付けない仕組みだし、それが出来るのは意識不明で入院してる管理者のクワンだけだし、どうにも手が出せなくて困ってるんだよ」

つまりは、八方塞がりってワケですか。

(こういう時には大変だな、)

ハイテクの固まりは。
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