ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「…あ~、お話中のところ大変申し訳ないが、そちらのロボットを見せて頂きたいのだが」

と、スーツの上に白衣を羽織った、初めて見る男性が鋭い目を光らせてきた。

(ん、ひょっとして警察の人)

漂う雰囲気が明らかにそうだ。

「わかりました。先生、ミライを向こうでセーフモードに」

所長に言われるまま、ミライを連れてスタンドに行き、いつもの手順でセーフモードにした。

「これで内部にアクセス出来ます。まずはライブの映像を出しましょう」

ミライに繋いだパソコンの画面に生の映像が映る。

おおっと声を上げる警察官。

「なるほど、これは確かに。凄い。納得しました」

ウンウン頷いてる。

どうやら目に映る生の映像を見て、ロボットだと確認したらしい。

「この子のデータも持って行かれますか?」

所長の問い掛けに警察官が首を振る。

「いえ、それには及びません。彼の、いや、あのロボットの事故前後のデータが取り出せたらご連絡下さい。くれぐれも改ざんはなさらないように」

「ええ。お約束しますよ」

答えた所長と握手を交わした警察官が、どうもと研究室から出て行く。

と、扉がガチャンと閉まった所で、フーッと場の緊張感が緩んだ。

「…どうして、警察の人がここへ?警察署の取調べじゃ足りなかったんですか?」

そんなにしつこく調べるんですか。

「いや、向こうでライブの映像やデータを見せようと思ってノートパソコンを持って行ったんだけど、向こうに着いた時になって、気付いちゃってね」

所長がニヤけた。
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