ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
と、奥からコーヒーを手に戻ってきた本田君が口を開いた。

「朝、ここへ飛び込んできたんですよ。どうして私をダマしたのか所長に理由を聞かせなさいよって、血相を変えて」

えっ、ここに来たのか?!

「それで、所長室に案内して、昼頃出てきたと思ったら、こうなってました」

本田君が両手を広げてる。

「それじゃ所長が?」

あの広海君をなだめて怒りを静めたってコトか?

「どうやって?」

一体所長はどんな魔法を使ったんだ?

「ええ、私も気になって所長に聞いたんです。彼女になんて言ったんですかって」

ウンウン、そしたら?

「彼女にお願いしたそうなんですよ」

「お願い?何を?」

「ここで、今まで誰もやっていない新しい学問を興してみないか、と」

「新しい学問?」

何だそりゃ?

「ええ。所長の言葉をそのまま借りると、こうです」

と本田君が、カップを机の上に置いて向き直った。
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