ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 突然、研究室の扉がガチャンと開く音が響いてきた。

振り向くと、ガラス壁越しに研究室の中をロイの寝台に向かってのしのし歩く局長と、後をついて行く所長の姿が見えた。

「何だろう」

局長がロイの前で立ち止まる。

両手を腰に当てて仁王立ちで、何やら只ならぬ雰囲気。

「行ってみましょう」

立ち上がった本田君について控え室から研究室へ出た。

あちこちから研究員たちが集まって来る。

「…どういう事だね所長」

局長がロイを見下ろしたまま口を開く。

「はい、ご覧の通り、動かないんです」

ちょっと気弱な声で答える所長。

「それは見ればわかる。どうして動かないのか、その理由を尋ねとるんだ」

振り向いて所長を見上げる局長。

「はい、それが、わからないんです」

「わからんだと?貴様、何を言っとるのかわかっとるのか!」

久々に見る局長の癇癪。

と、局長が所長にズカズカと詰め寄った。

「クワンを失い、二号機停止の原因もわからんじゃ、全く話にならんだろうがっ」

「それはまあ、そうですが…」

「徹底的に原因を追究したまえ。そして二度とこういった事態にならないよう、万全の対策を取りたまえ」

と、局長が所長に指を突き立てた。

「いいか、そもそもこの件の発端は、二号機の車の運転をみすみす認める結果になった、貴様の監督不行届きが原因だ。わかっとるんだろうな。責任は取ってもらう。貴様は減棒六ヶ月だ。しっかり肝に銘じておきたまえっ」

「はい…」

所長が無表情で答えてる。

わかりますよ所長の心中は。

「それとだな」

まだあるんですか!
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