ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「今回のクワン君の件で、残る予算は非常に厳しくなった。この冬の全職員の賞与はカットだ。いいな。このままでは来年度の研究員の人員削減も検討しなければいかん」

首を振る局長にみんながザッとざわついた。

この冬の賞与のカット、さらに人員削減も検討とは厳しい言葉だよ。

「これからは、予算を必要とする仕事は全て私の承認を得てから取り掛かりたまえ。どんな作業もだ。いいな。手を抜いた仕事は許さんからな」

局長が鼻息を荒げて続ける。

「フン、まあ、これで君たちも、今までに増して緊張感を持って仕事に励めるのじゃないのかね」

イヤミな言い方だよマッタク。

「わかりました局長。来週にはロイの原因究明が出来るよう、全力を尽くします」

「当然だ」

言葉を吐き捨てた局長が、ピリピリとした緊張感を残して、のしのしと研究室から出て行った。

「ねぇなんなの、あの人」

後から広海君が憮然と所長に問い掛けてる。

「ここの事務局長だよ。怒りっぽい人でさ。気にする事はないよ、いつもの事だからさ」

優しく微笑みかけた所長が、パッとみんなを振り返った。
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