ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「…じゃ、上に行こうかミライ」

ここでじっとしてたって仕方ないし。

「うん」

答えたミライと一緒に階段を三階へと上がる。

後ろから黙ってついてくるミライ。

靴音がヤケに耳に響いてくるな…。

緊張感がアリアリだよ。

「ふう…」

玄関に着き、運び込んだタンクをとりあえず下足箱の上に置く。

ミライを中に入れて扉をバタンと閉め、鍵をかける。

「…」

いつもと同じように靴を脱いで上がり、部屋を見渡す。

いつもと変わらない、10畳のリビングキッチンと奥に5畳の洋間が続く1LDK。

ただいつもと一つだけ違うのは、ミライがそこにいるって事。

膨れた紙袋を足元に並べたミライが、何をしたらいいかわからない感じでじっと僕を見てる。

(う~ん、いざとなると照れちゃうよな)

これって、同棲生活って言うのかな?

とりあえず、何か話しかけないと間が持たないよ。

「なあミライ、何か趣味とか好きなモノとかってあるのかい?」

ミライがしばらく考える。

「…特に無い」

突っ立ったままの素っ気ない返事。

(お~い、)

それじゃ話の繋ぎようがないよ。

「…」

じっと立ってるミライと見つめ合う、妙な間が。

(マイッタなぁ…)

いきなり行き詰まっちゃったよ。

こんな気をつかう会話をしてたら、とても身が持たないって。

「使ってもいい?おフロ」

と、突然ミライが質問してきた。
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