ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「あっ、そこにいたんだ先生、大変よっ」

息せき切って続けてくるルミちゃん。

「こっちに学生がたくさん集まってて、」

うん、それは知ってる。

「私が、ここにミライさんはいないって言ったら、」

うん、言ったら?

「理学部らしい一人が、じゃあ実験室だぞって言って走り出して、ここにいたみ~んながそっちに向かって動き出したわ!」

ええっ!

「逃げ出すなら今のうちよ!早く!」

じょ、冗談じゃない!

あの数でここに押し寄せられたら、身動き取れなくなるって!

(どうしよう)

こんな時、行く所があるとすれば、

「所長の所しかないっ!」

あそこが最後の砦だ。

「出ようミライッ!」

パッとミライの手を掴んで引っ張って、扉を勢いよく開ける。

よろめいた学生たちの間をかき分けて階段室に飛び込み、ダダダッと駆け下りる。

(これじゃ、まるで逃亡者だよ)

追い掛けて来る学生たちを振り切って大学を飛び出して、タクシーを捕まえて逃げるように走り出す。

ハァ~。

これから、どうすればいいんですか所長。
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