ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ううん。私といる時より、あなたといる時の方が先生は嬉しそうにしてるもの。私は、先生の笑顔を見ていたいの」

ミライが微笑んでる。

そうか。

思い出した。

(僕の笑顔を見る事が、一番嬉しい事)

ミライにとってはそれが全てなんだ。

例えその笑顔が、ミライ自身に向けられたものでなくても。

「ふ~ん、ずいぶん献身的なのね」

広海君が肩を竦めてる。

そうだよな。

自分への見返りは求めないって事か。

「わかったわ。私、誤解してた」

頷いてミライに握手を求める広海君。

「先生の事は置いといて、あなたとは仲良くしたいわ。いいでしょ?」

ってオイ、僕の事は置いとくのかよ。

「もちろん。これからもよろしくね」

「こちらこそっ」

笑顔で手を握り合う二人。

…ん?待てよ、

(って事は、ミライは僕たちを仲直りさせようとしてるって事か)

だとすれば、もう少し様子を見てもいいかも…。

(ミライが仲を取り持ってくれるかもしれないしな)

淡い期待を胸に、手にしたミネラルウォーターのボトルを口に運んだ。

ちょっとは期待が持てるかな。
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