ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

動き出した、研究室

 夕暮れの実験室。

茜色の日の光が差し込む室内には机が三つ並んでるけど、そこには広海君もミライもいない。

実験室にたった一人。

寂しいもんだよな。

(せめてミライでも居てくれたら)

ミライや所長に本田君、みんなが居る研究所のにぎやかさが羨ましいよ。

(それに)

ケンカしてるとはいえ、広海君もいるんだし。

(早く帰ろうかな…)

定時を過ぎて、一度部屋に戻ってミライの着替えをバッグに詰めて、研究所へと戻った。

裏口に出迎えてくれたのは、ミライ。

「おかえりなさい♪」

扉を開けてニッコリ微笑んでる。

「ただいま~」

自然と口元が緩むよ。

「着替え持って来たよ」

「ありがとう」

バッグを受け取ったミライが、両手で胸に抱きしめるように抱え上げた。

「広海さん、ずっと控え室で勉強してるのよ。夢中で周りが見えないみたい」

「そうかぁ」

ハァ。

そりゃますます入る余地が無いよ。

「今日、ロイの再起動に成功して、凄く気合が入ってるみたいね」

えっ、

「ロイが動いたのか?!」

「うん。データの取り出しに成功したって。お陰で研究室は大忙しなの」

やったじゃないか!

無事にアクセス出来たんだ!

「行ってみよう」

勢いよく階段を駆け上がる。

広海君も気になるけど、まずはこっちからだ!
< 244 / 321 >

この作品をシェア

pagetop