ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

局長の一言

 研究員たちがそれぞれの仕事をしている控え室の片隅で、本田君とミライと三人でコーヒー片手に時間を潰す。

と、入口の扉が開いて所長が現れ、続いて局長が姿を現した!

(うわっ)

相変わらずダブルのスーツで威圧感たっぷりだよ。

「あー諸君。ちょっといいかね」

局長が声を上げて中に入って来た。

みんなパッと手を止めて局長に顔を向ける。

「原因究明の報告書は読ませてもらった。私が期待したレベルの物が出来ておる。二号機は残念だったが、一号機の成功は間違いないと確信できた。そこでだ」

局長がジロリとみんなを見回し始めた。

(なんですか?何を言い出すんですか?)

固唾を呑んで次の言葉を見守った。

「そこで明日の午後三時、今までの研究成果の発表も含めた公式の記者会見をここのホールで行う事にした。もちろん、テレビ局も呼んでの記者会見だ」

な、何だってぇ?

(テレビ局を呼んで記者会見っ!)

みんながざわつき始めてる。

と、局長がニヤリとこっちに向かって笑みをこぼしてくるじゃないか。

「もちろん、君と一号機の今までの成り行きも全て公表させてもらうぞ」

ええーっ!?

「今までの成り行きって、まさかミライの目の映像もですか?!」

「そうだ。一号機のデータ全てだ」

そんなっ!

そんな事したら僕のプライベートまで世の中にさらされるじゃないですかっ!

(待ってくださいよっ、)

ますます僕とミライがテレビのさらし者になりますって!

「諸君、喜びたまえ」

って、全然聞いてないよぉ~。

「これで胸を張って公にできるぞ。抜かりのないよう、明日の昼までにきちんと準備をしておきたまえ。以上だ」

と言い切った局長が振り向いて出て行ってる。

ちょ、ちょっと待ってくださいよ~。

こっちはお構いなしですか?

と、本田君が所長の元へと駆け寄った。

「いよいよ公表するんですね所長!」

あれっ?!

意外だ。

意気揚々としてるぞ?

「ウン、いよいよだよ!」

所長まで意気込んでるじゃないか。

なんで?!
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