ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 パジャマに着替えた風呂上りのミライが、ローテーブルの横のクッションにペタンと座り込んで、じっと僕を見ている。

石鹸の香り立つ肌は血色もよく、とても病人だとは思えない。

(フロ上りだからか?)

にしても、ちょっと元気過ぎないかな?

「…なあ、ホントに病気なのか?」

疑問には思っていた。

そこは、大事なトコだ。

と、ミライがハッと体を強張らせた。

「…信じられない?」

お腹を押さえて、眉をひそめて、不信そうに僕を見つめ返してる。

初めて見る悲しげな眼差し。

まるで疑う僕を哀れむような。

(シマッタ!)

そうだよ。

聞いちゃいけない事だよ!

本人が一番気にしてる事じゃないか。

(バカだな、ホント)

そこまで考えが行かない自分が情けない。

「ゴメン。今のは聞かなかった事にしてくれるかな」

「うん」

頷いてちょっと微笑みを返してくれた。

「ありがとう」

とりあえずホッと一息。

「…」

とはいえ、相変わらず会話は弾まない。
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