ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ご覧頂いた通り、彼は本業である、人間行動学教室の助手を勤めながら、ミライのパートナーとして我々に参加してくれました。ミライが感情を感じるココロを持ち得たのは、彼の献身的な協力なくしてあり得なかった、そう言っても過言ではないでしょう。ミライにとって、彼はまさに欠かせない存在であったのです!」

所長の説明にますます力がこもる。

と、取材陣の中から手が挙がった。

(ん、質問か?)

と所長から指差された記者が立ち上がって、真っ直ぐ僕を見てきた。

(えっ、僕に!?)

一瞬でキッと背筋が伸びて構えてしまう。

「先生、ミライというロボットはあなたにとって、また人間全体にとって、どういう存在だとお考えですか?」

いきなりの核心を突く質問だ。

(僕にとって、人間全体にとって、)

横から所長がマイクを差し出してくる。

(ミライというロボットは、か)

考えながら、マイクをギュッと力強く握り締めた。

「僕はミライをただのロボットだとは思っていません」

さっきの所長のセリフを思い出す。

言葉が自然に湧いてくる。

「ロボットだとか人間だとか、それだけの存在ではないんです。ミライは僕にとって、そして僕らみんなにとって、これからの大事な『みらい』なんです!」

ひと際フラッシュが眩しく焚かれる。

その光を浴びながら、ミライを見た。

いつになく輝く笑顔のミライと、自然と見つめ合う。

(そうだよ)

これから僕は、『みらい』の為に頑張るんだ!
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