ふたりの彼女と、この出来事。 （新版）

「ねぇ所長、原因究明も記者会見も終わって、これからあのロイはどうするの？」

広海君が研究室を指差してる。

ガラスの向こうの寝台の上に、コードを繋がれたまま横たわるロイの姿が見える。

そういやどうするんだろう。

「ウン。これからプログラムを修正して、新しいデータを加えて、またゼロからやり直そうと思ってるんだ。君を管理者にしてね」

所長が広海君を指差した。

「私を？」

えっ？

広海君も驚いて返してる。

（そ、そうか）

ロイは男性型ロボットだし、相手としては広海君はピッタリだろうけど、

（でもそれじゃますます、）

距離も心も離れていくよな～。

「そうさ」

と、大きく頷いてみせる所長。

「ロイと広海君はここで、ミライと先生は外で、これまで通りの実験を続けていこうと思ってるんだ」

ニコヤカに笑みをこぼす所長。

（広海君はクワンの代わり、か）

欠員を補う意味でもベストな選択なんだろうけど…。

（それじゃ日中は全然別々になるよな）

と、所長がポンと僕の肩を叩いてきた。

「月曜からは、君は自分の部屋に戻って、今まで通りに大学に通ってもらうよ」

えっ？

じゃあもうここには泊まれないってコト？

「ウンウン、これでロイの復活の日が来れば、事故の前と同じに戻れるよ」

嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべてる。

（う～ん、夜も別々になるのか）

何もしないと、どんどん引き裂かれていくな…。

（ゆっくりもしてられないよ）

何か、動き出さないと。