ふたりの彼女と、この出来事。 （新版）

新年

　迎えた新年。

広海君と初詣に出かけた帰りに、所長の家にお邪魔してみた。

しめ縄が飾られた玄関の扉が開いて、いつもの笑顔の所長が顔を見せる。

「いやぁ～、あけましておめでとう」

お酒が入っているのか、ちょっと赤ら顔の所長。

「おめでとうございます」

広海君と一緒に声を返す。

と、所長の後ろから愛ちゃん舞ちゃんが廊下をタタタッと駆けて来た。

「あけましておめでとーございます」

「おめれとうございましゅ」

可愛らしい挨拶。

二人に引っ張られるように和室に通されて、一緒にコタツに入ってテレビを見ていると、ミライがひょこっと顔を出してきた。

「あけましておめでとうございます♪」

エプロン姿でニッコリと微笑みかけてくるミライ。

「おめでとう」

ちょっと見ない内に、また可愛らしくなったかな？

「ねぇ台所手伝ってるの？」

「うん。よかったらお雑煮いかが？」

ミライが尋ねてきた。

「あ、もらおうかな」

「食べる食べる～」

はしゃぐ広海君に、ミライが微笑んで返す。

「お餅はいくつ？」

「私一つでいいよ～」

「あ、僕は三つで」

三本指で答える。

「わかった。待ってて」

頷いたミライがリビングを通ってキッチンへ行き、テキパキと仕度をして雑煮を温め始めた。

「ふ～ん」

なぜかウンウン頷く広海君。