ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「もう料理もお手の物って感じね」

「ああ、そうだね」

そういえば一年前は、テレビの付け方も知らなかったんだよな。

(アイロン掛けを覚え、ボーリングを覚えて、)

しっかり料理までこなせるようになった。

(成長したんだな)

いや、まだまだこれからだよ。

「ウンウン。ボクのカミさんがマンツーマンで教えてるからさ、上達は早いよ。ボクが言うのもなんだけどさぁ~」

自慢げに胸を張る所長。

「私も教わって、腕を上げよっかな♪」

ニッコリ微笑む広海君。

「…そ、そうだね」

君の場合、教える方よりも教わる方の問題じゃないかって思うけど。

と、所長が微笑んで言葉を続けてきた。

「イイ感じで成長してるよ。ミライのシステムは上出来だね。ボクが言うのもなんだけどさぁ~」

また大袈裟に胸を張って、嬉しそうに微笑んでる。

「あっ、そうよ所長、」

と、広海君がパッと所長に向き直った。

「私一つ聞きたいと思ってた事があるんだけど」

ん、所長に聞きたい事?

「何だい?」

小首を傾げて聞き返す所長。

と、広海君が前のめりに問い掛けた。
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