ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「局長!」

振り返ると、研究室の入口に局長が立っているじゃないか!

途端に重々しい空気に襲われる。

(待てって、まさか!)

と、局長がふてぶてしい表情でノッシノッシと歩み寄って来た。

「君との契約は三月までだ。それで打ち切る」

な、何ですってぇ局長ぉ!

「そんな、ここまで来て打ち切りなんて、そんな!」

せっかく今まで頑張ってやって来たのに!

僕はもういらないって言うんですか局長!

「契約通り三月までだと言っとるだけだ。君に文句を言われる筋合いなどないっ」

吐き捨てた局長が、聞く耳など持たんと背を向けて出て行こうとしてる。

「待ってください!せっかく今まで苦労してやってきたんです!ぜひこれからも続けさせてください!お願いしますっ!」

局長の前に回り込んで必死に訴える。

このまま素直に諦めるわけには。

「ダメだダメだ。そう易々とムダ金を使ってまで君に預ける訳にはいかん。今までの対価は払っとるんだ、それで何の文句があると言うのかね」

表情一つ変えやしない。

あんたはカネの事しか頭にないのかっ!

(ウォーッ、こみ上げて来るこの気持ちをどうしてくれよう!)

もう少しで爆発しそうなところをギュッと拳を握り締めて抑え込む。

と、所長がサッと間に割って入ってきた。

「局長、ぜひもう一度考え直してもらえませんか」

意見してくれる所長。

が、局長は譲らない。

「出来んな、それは」

頑として受け入れない雰囲気。

さらに言葉を続けてくる。
< 297 / 321 >

この作品をシェア

pagetop