ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ハァ~」

所長が溜息をついて、僕の肩にポンと手を乗せてきた。

「ゴメン。ダメになっちゃったよ」

…そうみたいですね。

「君じゃないと大変な事になるって局長には言っといたんだけどさ…」

そうですか。

って所長、ダメになった事は仕方がないとして、

「大変な事って、何なんですか?」

それが気になりますよ。

「ウン…」

頷いて一呼吸置く所長。

「ミライはもう既に君に好意を寄せてる。ミライはロイと違って、管理者を変えても好意を寄せる人物が変わるわけじゃない。今ここで君を失えば、ロイのような悲劇が再び起こる可能性があるんだよ」

えっ、それはつまり、

「ミライが動かなくなるって事ですか!」

ロイが動かなくなったみたいに?!

「そういう事だね」

頷いて返してくる。

「いやでも、それは無いって発表してたじゃないですか」

テレビを呼んでの記者会見の時に。

「ウン」

張りのない声で返してくる所長。

「ボクが発表したのは、ロイに組み込んだハードシステムがそぐわなかったって事なんだ。好意を寄せる人物を失うと、悲しみを感じたココロが動作停止を起こす、そんな事態の発生まで否定した訳じゃないんだよ」

眉間に皴を寄せる所長。

「じゃあ、この先僕がいなくなったらミライは、」

動かなくなるんですか?

「ウン」

そんな力のない頷き方…。

「仮にそうならないとしても、死んだように表情を無くしてしまう可能性は高いね」

所長が宙を見上げてる。

そんな。

考えただけで寂しくなって来ますよ。

「それ、どうしようもないんですか?」

何とか避けられないんですか?
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