ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「初めましてぇ!」

と、突然元気良く、並んで立っていた所長さんが名刺を差し出してきた。

「ワタクシ只今ご紹介頂きました、近未来研究所の所長をやっております、栗栖次郎《くりすじろう》と申しますっ!いやぁ~、早くあなたにお会いしたかった!」

な、なんて陽気な明るい声なんだ!?

あなたホントに所長ですか?

(ノー天気なこの明るさは何なんだって)

疑問に思いながらも、社交辞令的に頭を下げながら名刺を受け取る。

(ハッキリ、この場で断った方がいいのかな?)

別に同じ学部でもないし。

教授の顔はこの前立てたしな、うん。

と、顎を引いた所長さんの目がキラッと輝いた。

「いやぁ~、実はあなたに是非お願いしたい共同研究がありまして」

えっ?

共同研究?!

縁談話じゃなくて?

「教授には既にご相談しましてね、それは良いと話を進めさせて頂いてまして~」

ん?頭が混乱するんですけど。

「どういう事ですか教授?」

共同研究なんて話、今まで一言も聞いてませんよっ?

「大体、何の共同研究が出来るんですか、理系の研究所と僕が」

ワケわかりませんよ。

「なあに簡単な事だ。明日から、所長の横にいる彼女を、君の研究室に手伝いとして受け容れてくれるだけでいい」

ハ???

明日から彼女を?

(んなこと言ったって)

思わず彼女を見つめた。

ほんの一瞬だったけど、すごく長く感じる時間。

「なぜなんですか?」

一体なんで、何のために彼女が僕の所に?
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