ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「とにかく、本田君を管理者にして実験を続けていこうと思うんだ。局長の言う通りにね。今後はミライも外へ出さないつもりなんだよ。だから君がここへ来なければ、ミライとの接点はなくなる。電話ぐらいはしてくれて構わないけど、会うことだけは一切やめてもらいたいんだ。いいね」

ハァ~。

ホント、希望を掻き消してくれる言葉ばかり並べてくれるよ。

と所長が、カップのコーヒーを啜った。

「ボクも、一ヶ月ぐらい休暇をもらう事にしたんだ。ミライと会う時間を削る為にね。ほら、もうチケットも予約したんだよ。ボクの方は準備完了さ」

上着の内ポケットから携帯を取り出して、まじまじと見つめてくる所長。

そのままじっと構えて動こうとしない。

(…その気なんだ、所長はもう)

決心を求められている雰囲気。

「ホントに、それしか方法はないんですか」

他に選択肢はないんですか?

と、所長がゆっくりと前のめりになった。

「本気でしかこんな事は言わない。ミライの事を思うならそうして欲しいんだ。本気で『みらい』の事を思うなら、ね」

所長が真剣に見つめてくる。

「…わかりました」

頷いて返す以外にない。

(悲しいとか、そんな事言ってられない)

僕個人の感情より大事な、『みらい』が懸かってるんだ。
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