ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

堪らない《たまらない》

 研究室へ移って、ミライが立つスタンドの前に進む。

と、所長が本田君を連れて寄って来た。

「まずは管理者を本田君に変更してから、再起動させて事情を話す事にしよう。さっき話したような作り話をするんだよ」

諭してくるような所長の導き。

頷き返して、ミライの目の前に歩み寄る。

(ミライ…)

微笑みを浮かべたまま立ってるミライ。

じっと見ていると、気持ちが揺らいでくるよ。

(もう見られないのか、いろんな笑顔が…)

思い返していくと涙が出そうだ。

「君の気持ちはミライもわかってくれるよ。さあ、はじめよう」

ポンと肩を叩いてくる所長。

黙って頷き返すしかない。

(フゥ…)

ミライの前に一歩寄って、瞳を見つめる。

「管理者変更」

と、ミライがピクンと反応した。

「はい、管理者変更ですね」

「…YES」

言ってしまった。

(あぁ、)

これでミライは僕の手から離れてしまうんだ。

(惜しいよ…)

一歩下がって、入れ違いに本田君がミライの前に立つ。

そこから本田君が管理者登録するのを黙って見つめる。

「ノーマルモードで再起動」

声を掛ける本田君。

やがて、本田君の声で動き出すミライ。

と満面の笑みで一歩踏み出したミライが、僕の方を見つめてきた。

「…」

込み上げてくる色んな想いに、声が掛けられない。

そんな空気を察したのか、ミライが急に顔を曇らせて、僕に向かって寄ってきた。
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