ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

最後の最後に

 研究所との契約終了日。

局長に事務局へ来るように呼び出された。

(最後の最後にここに来いだなんて)

僕はもう、フランスへ旅立っている身分。

誰にも見つからないように事務局へと入る。

と、部屋の奥の両袖机にいた局長がこっちを向いた。

「フン、3分遅れか。まあいい、そこに座りたまえ」

相変わらず無愛想な局長。

言われるままソファに腰を下ろす。

(この人だけは好きになれないな)

局長がふてぶてしく歩いて来て、ソファにドサッと座るなり書類をバサッとテーブルの上に放り出した。

「わかっているとは思うが」

局長が言葉を切って、ジロリと睨んでくる。

「これからはもう、一号機は、ミライは君のものだ」

「え、えっ、えっ?」

何ですって?

今、何て言いました?

「何度も言わせるな。一号機は君の物だと言ったんだ。わかっとるんだろうな」

「ええっ???」

一体何がどうなってるんだ?!

何だこの変わり様は!

「どうした、何も聞いていなかったのか?一号機は君に任せる事になったのだぞ」

ええっ!

「ホントですかっ?」

信じられない!

そんなセリフが局長の口から聞けるなんて!

「知らんとはおかしいな、先週話しておいたハズだが…」

聞いてませんって、そんな話。

「誰に話したんですか?」

「所長にだよ。君に伝えてないのか」

瞬間、脳裏にニヤリと笑う所長の顔が浮かんだ。

あの人ならやりそうなコトだ!

「所長は、所長は今どこにいるんですかっ!」

身を乗り出さずにはいられない。

「ああ、さっきテレビ局の人間が来て一緒に研究室に行ったと思うが、」

「わかりました、ちょっと先に行ってきます!」

勢いよく立ち上がる。

局長が呼び止めてきたけど、構うもんか!

僕は一目散に事務局を飛び出した!
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