ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)

大学

 マンションを出て、ミライと一緒に路地を大学へと向かう。

裏門を通り抜けて学内へ。

春休みで学生の姿はまばら。

木々を飛び交う小鳥の鳴き声がにぎやかだ。

横について歩くミライも楽しげな表情。

(…大丈夫かなミライは)

心配は山ほどある。

(でも、一緒に研究出来るんだよな)

って嬉しさの方が今は勝ってる。

現金なもんだよな、我ながら。

(これからは二人なんだな)

半分浮かれ気分で校舎の入口のガラス戸を開けて中へ進む。

壁のペンキが剥げかかった階段を二階へ上って廊下を進んで、

いつも通りの時刻に教授室の扉をノックしてノブを掴んだ。

「おはようございます」

声を上げながら中へ入る。

が、そこに教授の姿がない。

「あれ?」

両脇を書棚に挟まれた教授の机が空しくあるだけだ。

(おかしいな、いつもなら…)

教授が鼻メガネで新聞に目を通している時間なんだけど。

いないなんて珍しい。

「声が聞こえる。隣から」

と、隣の控え室に続くドアを指でちょこんと指差すミライ。

「隣から?」

何で隣から?

ドアに歩み寄って、ノックをしてドアノブを掴み、一歩踏み込みながら大きく開け放った。

普段は研究生たちが使う、散らかった机と書棚が並ぶ控え室。

そこに、教授と、なぜか所長が並んで座っていた!

「しょ、所長?」

何でここに?!
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