ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 駆ける勢いのまま研究室に飛び込む。

と、扉を開けてすぐ目の前で所長とディレクターが立ち話をしていた!

「あれっ、もう来たのかい?早かったね」

振り向くなり声を上げる所長。

何ノン気に言ってるんですかっ。

「早かったねじゃないですよっ!どうしてミライの事すぐに教えてくれなかったんですか!」

ふざけるのもイイ加減にしてくださいよ!

と、ニヤッと微笑み返してくる所長。

「その方がビックリしてくれると思ってね」

って、何考えてるんですか!

「当たり前じゃないですか!ビックリしましたよホントにっ…」

責めたところで、所長はニヤけるばかりだ。

(…)

まずは、舞い上がっていた気持ちを落ち着かせよう。

大きく深呼吸を一つ、フ~。

「そうそう。慌てない慌てない。まずは何より良かったじゃないか。局長からミライを取り戻せてさ」

所長が微笑みかけてくる。

「ええ。ホント、今でも信じられませんよ」

思ってもみない展開で驚くばかりですよ。

「それにしても、どうしてあの局長の気が変わったんですか?」

気になりますよ。

一体何があったんですか?!

「ウン、実はここを離れてる間に、スポンサーになってくれる企業を探して見つけて来てさ」

「スポンサー?」

そうか。

(ずっとミライの正体は秘密だったけど)

もう隠さなくていいからスポンサーも堂々と集められるんだ。

「そう、実験には一切口を出さない条件で、お金だけ出してくれるスポンサーをね。お陰で局長もホクホク顔さ。当分は予算の心配をする必要はないだろうからね」

「へえー」

世の中にはそんなありがた~い事をしてくれるところがあるんだな~。

「どこなんですか、そのスポンサーって」

ちょっと気になるな。

「いくつかあるんだけど、一つがここさ。さっき届いたばかりのポスターなんだけどね…」

と、所長が巻いてあった大きなポスターの試し刷りを体の前で縦に広げた。
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