ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「おはよう!」

椅子に腰掛けたまま明るい声で返してくる所長。

「どうして所長がここに?!」

「いやな~に、昨日、教授からロボットの資料が見たいって頼まれてたから持って来たんだよ。DVDにしてね」

って、所長がニヤけてDVDを見せびらかしてる。

「じゃあ、昨日頼まれてたって事は、初めから、」

今日ここへ来るつもりだったんだこの人は。

「だったら最初からそう言っといてくださいよ」

それなら僕だって構えていられたじゃないですかっ。

「まあまあ、いいじゃないか、ね」

すまして微笑んでるし。

マッタクもう。

どうしてこうノー天気なんだろうこの人は。

「どうです栗栖所長」

と、座っていた教授が立ち上がって前へ出てきた。

「せっかく来て頂いたんだ、ミライ君と一緒に、ミライ君の新しい仕事場になる実験室を見て行きませんか」

「ええ、ぜひ!」

「案内しましょう」

と、教授が自らドアを開けて廊下へ出て、先頭に立って歩きながら新校舎のエレベーターホールへと導いた。
< 32 / 321 >

この作品をシェア

pagetop