ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「いやぁ~、よく揃ってるね。想像以上だよ。これだけ測定機器があれば相当なデータ量が集まるんじゃないかな?」

「ええまあ、そうですね」

それを解析するのが僕の研究課題という訳ですよ。

「ウンウン。納得したよ。これだけあればあの論文が出来上がるのも頷ける。論文は読めるだけ読ませてもらったよ。すごいもんだね。行動の動機付けに関する心の状態を、統計的に分析出来るっていうのは」

ずいぶんホメてくれますね。

「いやそんな大した事じゃ…」

「出てきた数値を見れば心の状態がわかる。逆に言えば、心の状態を『数値的に』表せるって事だろ?ボクが一番感心したのはそこなんだ」

と、スッと指を一本突き立ててくる所長。

(ん、何か言いたげだナ…)

所長の微笑みにピンと来た。

「ひょっとしてこの研究、ロボットのプログラムに役立てられるんじゃないですか?」

心を数値で表せるんだから、それをキカイのココロに応用するのは簡単なハズ!

「ムリだね」

首を振る所長。

「えっ?」

拍子抜けな答え。
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