ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「だから、共同研究の為に、だ。コマゴマと文句を言ってくれるな」

教授がそう手を振ってあしらってくる。

(フ~ッ…)

どうやら、彼女が僕の所に来るって事は、もう教授が決めてしまったみたいだ。

助手の僕には逆らう余地はないってコト。

(マッタク…)

突然突拍子もない事をよく言い出す教授だけど、

(なぜそんな話を今日になって…)

フッと彼女と目が合った。

緊張してる緊張してる。

そりゃ僕だって、いきなり明日からって言われたら戸惑うよ。

「で教授、研究は一体何をすれば?」

「今まで通りの事をすればいいだけだ」

「えっ…」

な、何なんですか?

明らかに何か企んだ顔付きしてますけど教授?!

「…今度は何をするつもりなんですか」

思い起こせば去年の春。

ジャジャ馬振りが有名だった『アイツ』を、教授はわざわざ大学院生として引っぱって来て僕に押し付けたんだ。

『彼女は行動を観察するには最高の素材だよ』と、それはまあ嬉しそうに。

お陰で僕が、どれだけ苦労してきたかわかってますか教授。

「フッフッフ、ここにいると、人の行動に裏があるように勘ぐるクセが付いてしまうようだな」

って、そうさせたのはあなたでしょ教授!

「そりゃあ疑うようになりますよ」

「ハッハッハ、私は何も企んではいないぞ」

ウソだ絶対ウソ。

口元がニヤついてるし。

(絶対何か企んでるっ!)

でなきゃ今日の今日まで話を隠してた意味がないっ。

(今度は何なんだか…)

もうウンザリですよぉ。
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